彼女の嘘と俺の嘘



 キーボードを操作しているとき、左下画面に“タイピング中”と表示が出るので会話がかぶることなく、意外とスムーズにやり取りできて無駄なストレスを感じることはなかった。


 ところが、時計が午前1時を過ぎたあたりから、サキの様子がおかしくなった。


『ねぇ、シバ……シバはサキのこと好きぃ?』

 喋り方はまったりとして色っぽくもあり、音声チャットをはじめた頃の声とは別人に聞こえる。


シバ> どうしたの?眠たくなってきた?それともお酒飲んでるの?


『お酒なんて飲んでないよぉ~』と言ったあと、サキはケラケラと笑い出す。