彼女の嘘と俺の嘘



『もしもし、聞こえますか?』

 若い女の人の声が聞こえた。


 年齢をごまかしているのはおれだけのようだ。


シバ> 聞こえるよ


 サキが声をかけ、おれがチャットで返すという奇妙な会話がスタートした。


『サキで~す!お父さ~ん、お母さ~ん、弟さ~ん、聞こえますかぁ~』


シバ> わぁ、やめて


 サキが突然大声を張り上げ、おれは慌てているような文字を打つ。


 なぜなら、そうする必要があったからだ。