彼女の嘘と俺の嘘



「はい、空いてますよ。あのう夜になるとB-56を指定するお客様が多いのですが、なにかあるんですか?」

 若い男の店員が不思議そうな顔をして尋ねる。


「さぁね、場所的に居心地が良いからかな」


「そうなんですか」

 おれの適当な答えを聞いた店員は半信半疑で頷く。


 伝票が挟んであるクリップボードを受け取り、DVDコーナーで新作が入ってないか棚を眺めていると、受付に小太りな30代くらいの男がやってきた。


 手にはお菓子が詰まったビニール袋を持っている。