ライク・ア・キムタク

「昇進って、松本くん・・・」
「松本先生・・・」
どん引きする菱沼と成田の言葉には耳も貸さず、松本は「早速捜査を開始しなければ」と腕を組んで考え始めた。そして、
「私の脳医学で、事件を解決するのです。脳は嘘をつけません、他の患者さんに聞き込みを開始します」と、毛利の病室を出て行こうとした。
「松本先生、あのドラマ見てるんですね。でも、ここの患者さんたちじゃ無理ですよ」成田が松本の出鼻を挫こうとするが、すでに入り込んでいる彼には通用しなかった。
松本は顔を成田の顔の間近まで近づけ、
「成田さん、彼らの記憶は、脳のどこかにしまわれたまま出てくることができないだけなんです。確かめてみます」と言い放つと、隣の、先ほど長谷川と素っ頓狂なやり取りを披露した患者の方へ移動した。
「成田看護部長、ドラマって?」ひとり、話題についていく事ができていない菱沼が成田に尋ねる。
「ああ、松本先生が言った、脳医学で事件解決って、そういうテレビドラマがあるんですよ。さっきの顔と顔を近づけたのも、ドラマの登場人物の癖の真似」
「そんなドラマの真似事で解決するつもりか、松本くんは」