4人は鍵を開けて特別療養病室に入ってみたが、状況は変わらなかった。
「確かに・・・窓や天井はやられてないな。畳の下はコンクリにフローリングが一枚張られているだけだし、ここから出られるはずもない」
長谷川はため息混じりに言ったあと、
「くそっ。私は少なくとも、この特別療養病室から退院者を出すつもりはないのに!」
と大声で付け足した。
「院長、そんな暴言を・・・」
部下の三人が、オロオロと長谷川に制止の手を伸ばしながらうろたえる。なおも長谷川は大声で、
「気にすることは無い。どうせ、この病棟の患者たちにはわからないんだ」
そして彼は、廊下に出て一番奥の病室の窓に向かい、「私がさっき、なんて言ったか聞こえたか?」と問いかけた。部屋の奥からは弱々しい声で「えい、えい、おー。赤信号しゅっぱーつ・・・」と返ってきた。
長谷川は三人のいる病室には戻らず廊下から、
「なっ。じゃあ今回の件は、担当医の松本くんにまかせるよ。松本くん、君が行方不明患者特別捜査本部長だ」
と、それだけ言い残し廊下を走り去っていった。
「やったー、昇進だー!」
松本はガッツポーズした。