くいくいと制服の裾を引っ張られて振り返れば、まるで飼い主に置いていかれた子犬みたいな椿の顔が目に入った。

そんなにしょげなくてもいいのに…。
本当に可愛いなぁ、もう。

「早く行くわよ、ほら!」

「ん、」

自然に椿が私の手を握ってくる。
これは小さい頃からの椿のクセだ。

置いていかれそうになるとすぐに服の裾を引いて、手を握ってくる。

これをされると例え怒っていても許してしまう。

「今日から頑張るぞー!」

「一緒にね。」

「今年も同じクラスになるといいわね。」

「うん。」

春風を背に受けながら、中学校までの僅かな道のりを歩く。

今日から新しい教室、新しいクラスメート、新しい先生との生活が始める。

それでも、きっと椿との生活は変わらない。

きっと-……。