「はぁ、はぁ、はぁ……」
頬を伝ってしたたり落ちた汗は、アスファルトの地面に降り立つと同時に蒸発していった。
張り付いた髪を整える元気なんてなくて。
荒く息を、胸の中のものと一緒に吐き出す。
何度も、何度も。
肌と衣服の間に溜まった熱気がそれに合わせるようにして押し出されると、なんともいえない不快感がわたしを包んだ。
まばたきが、出来ない。
一瞬でもまぶたを降ろしてしまえば、さっきの光景がそこに映し出されてしまうから。
つい昨日までのわたしなら、大声で「おめでと~!」と叫びながら教室に飛び込んでふたりをびっくりさせていたことだろう。
でも、今のわたしは……。
見当違いなのはわかってる。
けれど、宮脇先生の話の後、身動きがとれなくなってもがいていたわたしには──
(裏切りだ……)
そう映ってしまった。
思ってしまった。
「うっ……」
不意に、圧迫感が襲ってくる。
下腹部を内側から直接押さえつけるような、鈍痛。
(そんな……今月はまだずっと先のはずなのに……)
けれどその鈍い痛みはそんなわたしの予想を嘲笑うように段々と自己主張を強くしていく。
「いっ、た……」
マズイ。
予定外だから今日はアレを持ってきてないのに。
かといって家に急ぐことも、痛くて出来ない。
「も、やだ……」
何もかもが嫌になってきて、その場にうずくまる。
照りつけられてじりじりと焦がされる後頭部と相反して、背中は冷や汗とも脂汗ともつかないものが伝い、それはやがて全身の血の気を奪っていった。
痛いからなのか、哀しいからなのか、それとも“悔しい”からなのか。
──タッ、パタタッ
折り曲げた膝の上に涙が落ちた。
と、そのとき。
「紗智ちゃん!? ちょっと、どうしたの!!」
聞き慣れた声に顔を上げると、少し滲んだ視界に、栗色の髪を揺らしながら駆け寄ってくるまゆみさんの姿が映った。


