目を、疑った。
午後の陽射しからまぬがれた薄暗い教室で、
(う、そ……)
良く知る人物が、ふたり。
(や、だ……)
思わず口元を両手で押さえる。
嗚咽を隠すため。
悲鳴を押し込めるため。
過ぎる呼吸を聞かれないようにするため。
(い、や……)
何かに頭をつかまれたように、そこから視線を動かすことが出来ない。
見たくなんてないのに──
見たくなんてないのに──
見たくなんてないのに──
(どうしてよ!!──)
肩に軽く手を置いて首を少し下に伸ばす親友。
胸の前で両の手を組んで顎をわずかに上げる親友。
音が遠ざかる。
世界が、その1点に収束していく。
いつもなら、大好きなその感覚に、わたしは身体を強張らせた。
(逃げなくちゃ……早く、早く、早く!)
混乱する頭の片隅から、そんな自分の声がやけに鮮明に聞こえる。
もう音がしているかどうかなんてわからなかったけれど、出来る限り細心の注意を払いながら、後ずさるわたし。
ふたりの姿が壁に隠れてしまっても、しばらくはその状態のまま離れ、そして昇降階段までやってきてようやく、足をもつれさせながら、力の限り速く──
──キスをしていたふたりから逃げ出した。


