美術室を後にしたわたしは、なんとなしに教室へと足を向けた。
どうしても、そのまま家路につく気になれなかったから。
開け放たれた廊下の窓の向こうから運動部の声が聞こえてくる。
初夏の香りを携えたそれはやけに清々しくて、真逆のベクトルを向いているわたしはまるで、光が強くなればなるほど色を濃く深くしていく影のように底のない闇に堕とされていった。
どうすれば、いいのだろうか。
自分のこころに蓋をして、何事もなかったように八重ちゃんを応援することが“最良の選択”?
よくある恋愛話なら、きっと、
「気持ちだけは伝えるべき」
って言葉がどこからか降ってくるに違いない。
でも、それですべての関係が崩れてしまったら?
現実は、ハッピーエンドだけで作られてるわけじゃない。
過ちをリセットするボタンなんてどこにもありはしない。
そんなに簡単な仕組みなら、きっと世界に争いなんて生まれない。
ハッピーエンドの裏側にはいつだってアンハッピーエンドがくっついていて。
それは決して分かつことなんて出来ない。
だからといって、自分を犠牲にしたその瞬間。
きっとわたしはもう、亮平や八重ちゃんの友達ではいられないだろう。
隠し事のない関係なんて理想論だけれど、隠すことで“嘘の笑顔を作る”ことしか出来なくなるのなら、それは自己犠牲とは名ばかりの自己満足だ。
それは誰のためにもならない。
それに──あのふたりならわたしの嘘の笑顔なんてすぐに見抜いてしまう。
だって、
「伊達で、幼馴染の親友なわけじゃ、ないもん……」
気付けばわたしは無意識に自分の教室まで歩いていて──


