今の、大人でも子供でもない、ましてさしたる恋愛経験もないそんなわたしがいえることなんて何ひとつありはしない。
でも、ひとつだけ問いかけることだけは出来る。
「先生は……後悔、してる?」
わたしは、きっと「後悔なんてしてない」という言葉が返ってくると思った。
だって、後悔なんてしているとしたら、結婚なんてするわけがないと思ったから。
どれだけ自分を蔑(さげす)もうとも、裏切り者だといおうとも、奥さんを愛しているという気持ちには胸を張っていると思うから。
けれど、
「わかりません……」
先生は軽く目を伏せて、けれどはっきりとそう答えた。
「どうして! だって先生、奥さんのこと大切な気持ちはウソなんかじゃないでしょう? だったら、哀しいけど、苦しいけど、間違いなんかじゃないっていうべき──」
たぶん、わたしがここまでいうのは自分自身の今を、先生の過去とダブらせているから。
どんな選択をしたとしても、それを後悔したくないっていう想いを正当化して欲しかったんだと思う。
でないと、前へ、わたしは進めない。
なのに……。
ぐちゃぐちゃになった感情を表すように、同じくぐちゃぐちゃになった視界。
迷い子がすがりつくように先生のシャツを掴んだけれど、決して発言を取り消すような言葉は聞こえてこない。
ただ、その代わりに、先生はこんなことをいった。


