「はぁ……」
放課後がやってくると同時に逃げるようにして美術室に向かったわたし。
気付けば他の部員は皆帰って、室内にはカンバスに向かうわたしひとりになってしまっていた。
「はぁ……」
これで何度目のため息だろうか。
陰湿な空気を払拭するように、まっさらなカンバスに筆を1本、走らせる。
水色の真一文字。
「さしずめ、“立ち入り禁止”といったところでしょうか?」
不意に背後から声がしてびっくりする。
振り返るとそこには、組んだ腕の片方をあごに当てた宮脇先生が立っていた。
「そう、みえますか?」
何の考えもなく引いたただの線だったのだけれど、そういわれてみればそんな題名が合うような気もする。
「絵は、描く人の気持ちを如実に反映するものです。今日の貴女の雰囲気から、そう感じたんですよ」
「……さすが先生ですね」
「いやいや、年の功ですよ」
やさしいその口調に、少し肩の力が抜ける。
もし、見知らぬ誰かに指摘されていたら、たぶん全てを見透かされたような気がして余計に気が重くなっていたかもしれない。
けれど、宮脇先生にいわれると、あたたかい何かに包まれるようでどこかほっ、とした。
肩、こんなにこわばってたんだな。


