「じゃぁまたね~」
「うん。バイバイ」
日暮れに差し掛かる頃、八重ちゃんと別れたわたし。
キッチンに確かまだお気に入りのローズヒップティーがあったはずだと思い出し、軽やかにスキップしたりなんかして。
手には叔父さんが包んでくれたバームクーヘン。
これで浮かれなければたぶんわたしは病気だ。
「うぉ!? 今時スキップするやつがいるなんて大発見だな」
おや。
この失礼極まりない口調は、
「おや亮平くん。ごきげんよう」
ふふふ。
今のわたしは大変機嫌が良いので少々のことは大目にみてあげるのですよ。
「まさに“ごきげん”なようだな。ん? その包み──」
「あげないわよ?」
「いや、まだ何も──」
「あげないわよ?」
「や、だか──」
「あげないわよ?」
「……わかりましたよ」
「ふむ。わかればよろしい」
ふぅ。
危ない危ない。
危うくこの至宝を強奪されるところだったわ。
だいたい、コイツはどうせ八重ちゃんからプレゼントされることになるんだから。
ここで中身をバラしたりなんかしたら、そのときの驚きと喜びが半減しちゃうもんね。
ほら、わたしの対応は正しい。
間違っても食い意地がはってるわけじゃない。
うん。


