「お待たせ~」
ブリキのベルに迎えられて店内に入る。
「おぅ。早くしないと時間がないぞ」
厨房で来場者に振舞うお菓子を作りながら叔父さん。
「はぁい。あれ? 草にぃと亮平は?」
草にぃはともかく、アイツは準備係と称して呼びつけてやったのに作業をさぼるとはいい度胸だ。
「ふたりなら2階にいるわよ~」
角が生え始めたわたしの耳に届いたのはふわりん、とした声。
「まゆねぇ!」
わたしは慌てて駆け寄る。
来場者に配るためのパンフが入った箱を持っていたからだ。
「そういう仕事は男どもにやらせて、まゆねぇはゆっくりしててってば!」
箱を取り上げると、まゆねぇは不満そうに頬を膨らませて、
「え~だって暇なのよぅ~。皆が気を使って何もさせてくれないんだもん」
「仕方ないですよまゆみさん。そのお腹だもの」
そう、まゆねぇは現在妊娠20週目を迎えたりっぱな妊婦さんなのだ。
「ったくあのふたりはぁぁぁぁ」
「あぁ紗智ちゃんあんまり怒らないであげてね? ふたりともうちのおチビちゃんの相手をずっとさせられてて今グロッキー中だから」
そうなんと、お腹の子はふたり目なのだ。
それにしても不甲斐ないったらありゃしない。
後できつ~っく叱っておくとしよう。
「じゃぁまぁもう時間もないし、さっさと準備をしちゃいましょうか」
「うん」
「じゃ、わたしはテーブル拭いちゃうわね。それならいいでしょう?」
そうしてわたしたちは最後の仕上げに入った。


