「本当にありがとうございました」
カンバスを手に、深々と頭を下げる。
本当に、先生がいてくれて助かった。
「いえいえ、私も後ほど観にうかがいますから」
「あはっ、うれしいけど緊張するなぁ」
「ははは」
そして校門で別れ際、
「実はね。前にいった“彼”と、再会することが出来ました」
「えっ!?」
それって、あの奥さんの元カレ?
確か高校卒業以来会ってないっていってた。
「あなたたちが卒業してしばらく経った頃です。不意に、ね。本当に不意に手紙が届いたんです」
先生はポケットから1枚の葉書を取り出し、それをわたしに見せてくれた。
男らしい、真っ直ぐで力強い字。
なんだかここからこの人の性格がうかがえる。
裏をめくるとそこには写真。
真っ青な空。
それがこの人が撮ったものなのか、そういう絵葉書なのかはわからない。
その空の右下に短く、
『遅くなってすまん。ありがとう』
不器用な言葉。
きっと書きたいことは山のようにあったのだろう。
けれどうまく言葉に出来なくって。
この短い文の中には沢山の気持ちが詰まっている。
そう感じさせた。
「まったく、行き先も告げずに出て行って、ようやく連絡がきたかと思えばこんな短い文章……」
そういいながら、先生はとてもやさしい目をして、朗らかに微笑む。
これが届いた後、先生は奥さんとふたりで彼のところに逢いにいったのだそうな。
その表情はまるで遠足の楽しかったことを一生懸命語る子供のよう。


