ようやく八重ちゃんのマンションに着いたわたしはすぐさま彼女の部屋の前までかけ上がる。
エレベーターもあるし正直足も体力も限界だったけれど、少しでも急ぎたかったから。
「はぁ、はぁ、んくっ、はぁ、はぁ……」
乱れた呼吸を整えるのももどかしく、
──ピンポーン ピンポーン
ドアに手をつきながら呼び鈴を鳴らす。
すぐに返答がないところを見るとどうやらおじさんたちは今日も仕事のようだ。
(お願い……出て……)
祈るようにして、彼女が出てくるのを待つ。
もし部屋にいなければその時点でもうアウト──
「はい……」
そう思ってた矢先、おもむろにドアが開かれた。
「八重ちゃん!」
「紗智ちゃん!? どうして」
眉を跳ね上げて驚きをあらわにした彼女はドアを閉めようとしたけれど、とっさに隙間に足を突っ込んでそれを制す。
「どうしてはこっちのセリフだよ! なんでこんなところにいるの!!」
差し迫る時間と彼女の行動につい声を荒げる。
「だって、だって……」
「や、八重ちゃん?」
ぽろぽろと涙をこぼしながらその場に崩れ落ちる。
慌ててドアを開け、しゃがみこむと、
「ごめん……ごめんね……」
流れ落ちる涙を拭おうともせず「ごめんね……」と何度も繰り返す彼女。
「どうしたの? ごめんじゃわからないよ」
これ以上興奮させないように出来るだけやさしい声音で問いかける。
するとぽつり、ぽつり、と
「怖い、の……今日、告白しようと思ってたけど……急に、怖くなったの……」
不安を、嗚咽交じりに口にし始めた。


