「俺さ……今まで“変わらない関係”が“最高の関係”だと思ってた」
「え……」
あぐらをかいた足の上で手を組み、うつむく亮平。
きつくきつく組まれた手は少し震えていて。
「でもさ。留学を決めたとき、気付いたのよ」
「なに、に?」
鼻をすすりながら、ちょっとつまって聞き返す。
すると亮平は顔を上げ、一瞬わたしたちの視線をつかまえてから天井を仰いだ。
つられて、わたしも八重ちゃんも天井を仰ぎ見る。
そこには見慣れた木板の天井が当然あったけれど、なぜだか少し目を凝らすと空が見えるような気がした。
「“変わらない関係”が最高なんじゃない。“変わることを怖れない関係”こそが最高で、最強なんじゃないか? って」
「変わることを……怖れない……」
噛みしめるように、繰り返す。
「空を綺麗に思えたり、感動したりするのってさ。きっと絶えず変化してるからじゃないかな。その景色が、瞬間が──2度やってくることは絶対に、ない。だから……」
変わりゆくモノの中だけにある、一瞬の輝き。
それは裏を返せば、変わってゆかなければ輝くことはないということ。
「紗智もやえっちも、自分の道を進むために変化していってるだろ?」
本人に自覚があるかどうかは別として。
「それがさ。俺はうれしいし、誇らしい」
「ん……」
「ありがと……」
「だから俺、そんなふたりに負けないくらいに変わっていきたいのよ」
誰からともなく、顔を下ろして、視線を交差させるわたしたち。


