本当に、この時間が終わらなければいいのにな。
八重ちゃんがいて、亮平がいて。
ときどきケンカして、馬鹿やって、さやかに笑い合って。
電車で終着駅まで切符を買って旅なんていいかも。
それとも海で“もぐりっこ”するのもいい。
あぁそうだ。
いち度学校の坂を自転車で下って競争なんてするのもいいかもしれない。
そういうなんでもない時間を──
「さ、紗智ちゃん!?」
「わ、わ、わ!? どした急に!」
不意に、ふたりがわたしの顔をびっくりした表情で覗き込む。
「どうしたって、何が……あ、れ?」
うそ。
やだ。
こういうの、絶対嫌なのに。
「う、うぅぅ……」
わたしは、自分でまったく気付かない内に、泣いていた。
それに気付いた瞬間、どうにも涙が止まらなくなって。
「うぅっ、うぁぁぁ……」
言葉にはしなかった。
それだけは──それだけはしちゃいけないから。
けれど、こんなの、口にしてるのと一緒だよね。
『いかないでよ!』
そう大声で叫んでいるのと。
小さな、小さなこころの穴から予期せずあふれ出した哀しみ。
でもそれは必死に、堅固に作っていたはずのダムを崩してしまうには十分な大きさだった。
「紗智ちゃ、ん、ダメだよ……ダ、メ」
わたしの肩を包み込むように抱いてそういった八重ちゃんもまた、わたしの涙につられて少し震えている。
「ダメ、だよ……」
「うぅぁぁぁ……」
わたしの背中をさすりながらも、その言葉は自分自身にも言い聞かせているのだろう。
何度、何度も。
部屋にはわたしの嗚咽と、八重ちゃんの呼びかけだけがあまりにも切なく拡がっていた。


