かくして場所は亮平宅。
「で、紗智くん。わからないところはどこかね」
「はい先生! テスト範囲からしてわかりません!!」
「帰れ! 帰ってしまえ!!」
「細かいこといわないでよっ。そもそもアンタが理由ですっぽぬけてたんだから!」
「まぁまぁ紗智ちゃんも亮平くんも。あのね紗智ちゃん、範囲は……」
メールで「助けて!」とひとこと打って呼び出した亮平を拝み倒して開いた緊急勉強会。
といっても緊急なのはわたしだけなのだけれど。
「だからここはこの公式を当てはめてだなぁ……」
「え? じゃあこのχは?」
「そこはね。こうして……」
ずうっと前から見慣れたこの光景。
いつも亮平が右で、八重ちゃんが左。
この前のここでのやりとり、空気が嘘だったかのよう。
だって気まずさなんて今は気にしていられない。
それになんだか、
「えへへ」
「なんだ? 急に。気持ち悪いなぁ……」
なんだかうれしかった。
こうやってまた3人で今までと同じ空気を作り出せているから。
もちろん、それぞれのこころの中には各々の想いが渦巻いているのだろうけど。
でも。
こんなひとときはもうしばらくないとわかっていて。
だからこそ、変わらない3人の時間を大切にしようと。
そう思っているのを感じる。


