わたしの馬鹿バカばか!
何か大事なこと忘れてると思ったら、これだ。
これだったのだ!!
今なら千手観音にだって勝てる勢いで画材を片付けて、風を追い越す速さで廊下を走り抜ける。
廊下の『走るな危険!』の貼り紙が、
「たまらんぜよ」
といいながら廊下に舞うのが視界の隅に映ったけれど、そんなものはおかまいなし。
しまった。
絵のこととか亮平のこととかばっかりに気を根こそぎとられてすっかり忘れてた。
こんなことならもっと早く草にぃに『10秒間の魔法』を教えてもらっておけばよかった。
最悪だ。
最高に最悪だ。
携帯を操作しつつ階下に走り降りたわたしはスパーン、と小気味良い音を立てて、
「八重ちゃん!」
と叫んだ。
「へぅっ!? ど、どうしたの紗智ちゃん?」
“おたま”を片手に“めんたま”をまんまるにさせる八重ちゃん。
「う、うぇぇぇぇ……」
そんな彼女のエプロンに、
「え? え!? ど、どうしたの?」
崩れ落ちつつしがみつき、
「テスト勉強手伝ってぇぇぇ」
わたしはすがりつくのだった。


