ふっ、と息をついた瞬間に、運動部のかけ声が耳に滑り込んでくる。
集中していた証拠だろう。
気付けばもう美術室にはわたししかいなくなっていた。
「んっ……はぁ」
筆を持ったまま思い切り伸びをする。
背骨辺りがぱきんっ、と鳴って、肩の力を抜くと一気に疲れがやってきた。
目の前にはカンバス。
「もうちょっと、ね……」
このペースなら終業式までには十分間に合うはず。
ふと時計を見ると下校時間まではもう間もなくだった。
空がまだ青々としているものだからそれほど時間は経っていないかと思っていたけれど。
この時季は景色だけだと時間がわかりにくい。
さて。
じゃぁ帰るとしようかな。
かちゃかちゃと画材を片付ける音が室内に響く。
そういえば八重ちゃんも今日は部活だ、っていってたっけ。
まだいるかな。
と、
「おや日下さん。今から帰りですか?」
「あ、宮脇先生」
入口からひょい、と顔を覗かせた先生は、
「じゃあ戸締まりお願いしますね。入口だけは後で閉めておきますから」
それだけいって準備室の方に消えて──
「あぁそうそう」
何かを思い出したのか、もう一度顔を覗かせる。
「なんですか?」
「いや、熱心に絵を描くのは結構ですが、期末テストの方もしっかりお願いしますね? あまり悪いようだと学年主任に怒られちゃいますから」
そういって今度こそ姿を消した。
「…………」
期末、テスト?
「……へ?」
今、何日?
携帯をぱくん、と開いてカレンダーを確認する。
「…………あ、あぁぁぁぁ」
ぷるぷる、と震える手。


