「こいつの名前はな『10秒間の魔法』ってんだ」
「10秒間だけ効果があるってこと?」
「だ~か~ら~、答えを急ぐなっての。前に美味い珈琲の淹れ方は教えたよな?」
えっと……相手に美味しく飲んでもらえるよう願うこと、だったよね。
「こいつはな、自分が飲むときに使うのさ。よ~っくみてろよ?」
カップにたっぷりのお湯をそそぐ草にぃ。
白磁の内っかわでゆったりと波打つそれを満足そうに見て頷くと、やかんを置いて愛でるように眺める。
そしてしばし待つ。
「…………」
しばし、待つ。
「…………」
しばし、待つ……。
「…………」
しばし、待──って、
「あの、草太お兄様?」
「なんだね紗智すけくん」
誰が“すけ”だ。
それより、
「何やってんの? 呪文とか、儀式チックな何かとかは?」
ただカップにお湯をそそいでぼぉ、っとしてるだけなんて。
そんなもののどこが魔法だというのか。
からかうにしてはタチの悪い。
「おやおや、もしかしてお気に召さない?」
「いや、お気に召すもなにも……」
何もしてないし。
「ちなみにもう魔法は終わったぞ」
「え?」
いつの間に?
だって、ホントのホントに何もしてなかったじゃない!
と、
「あ! もしかして!!」
何かに気付いたように八重ちゃんが声を上げる。


