考えてみれば。
草にぃはどうしても“そのとき”まで秘密にしておきたいことがあるから。
だから亮平のこともいえないのかもしれない。
男の友情うんぬんの前に、ね。
無論、叔父さんに聞いてみたところでさらに口が堅いだろう。
結局は亮平から話してくれるまで待つことしかわたしたちには出来ないのだろうか。
「ま、そう心配するな。少なくとも情けないその“ツラ”が余計にしおれるようなことはねぇよ」
そうはいってもこう色々と悩まされては花の乙女も元気がなくなって当然だよ。
「こうなるともうあれだね。“しておかなきゃいけないこと”に集中するしかないのかも」
「八重ちゃんは大人だ……って、また同じこといっちゃってるなぁ、わたし」
この懲りない性格をどうにか出来ないものか。
「やれやれ。しょうがねぇなぁ」
そう草にぃが苦笑いをこぼしたと同時に、タイミングよく火にかけておいたやかんから、
──ピィィィィ!!
と、沸騰を知らせる笛の音が上がった。
火を止めて、洗っておいたカップをシンクの上に置く草にぃ。
「どら。回遊魚並みの突っ走り屋にちょいと“魔法”を教えてやろう」
「魔法?」
一瞬からかわれているのかとも思ったけれど、そんな風でもない。
おどろおどろしい液体が出てくるわけでも、イモリだかヤモリだかの串焼きが出てくる様子も、ない。
「乙女チックなおまじないなら間に合ってるよ」
今はちょっとそんな気分じゃないもの。
それにもともとあまりそういうものには興味がないし。
ところが草にぃは、
「いたっ!」
わたしのおでこを人差し指でぴんっ、とはじくと、
「こいつはこの店に代々伝わる由緒正しき魔法だ。あんまり邪険にするとバチがあたるぞ?」
いや、ここのマスターはまだ初代ですが?


