「ある日突然それまでと別人になるなんてこたぁ確かにできねぇよ。でもな……それは“おまえだけ”にいえることか?」
「あ……」
「そうじゃないだろう? 亮平だって、おまえたちを大事に思う気持ちは何ひとつ変わっちゃいないだろうさ」
変わって、ない。
草にぃのその言葉を、噛みしめながら腕に抱く。
すると少しだけ、こころの奥の方があたたかくなったような気がした。
「ここにきたときな。あいつなんていったと思う? 「おれ、ずっと大切にしていきたいふたりを傷つけちゃいました」っていったんだぜ?」
う、そ……。
本当に?
「大切にして“きた”でも、して“いる”でもねぇんだよ」
それは『過去形』でも『現在形』でもない。
大切にして“いきたい”。
そう──『未来』へとつながっている言葉の形。
「そんなやつがな。これ以上おまえらを傷つけるようなことをすると思うか?」
亮平のその想いをうれしく感じるよりも、自分の情けなさの方が強かった。
気持ちを理解してないのはわたしの方だ。
自分のことばっかりで、相手がどう思ってくれているか。
それに目を向けようとしてなかったのだ。
「ごめんなさい……」
すとんっ、と椅子に座る。
「紗智ちゃん……」
そっと背中に触れた八重ちゃんの手はとてもあたたかくて、今にも泣きそうになってくる。


