『わたし、八重ちゃんたちの足引っ張ってばっかりで、お荷物で、これじゃいつか呆れられて嫌われちゃうよね……』
自分が情けなくて、恥ずかしくて、悔しくて、どうしようもなくて。
どんどんネガティブな方向に気分が落ち込んでいって。
このときのわたしは自分が嫌いで嫌いでたまらなかった。
そんなわたしに叔父さんは、1杯の珈琲をわたしの前に置くと、
『ほら。炒りすぎて芳ばしさ通り越した激しく焦げ臭い、苦い、おまけに渋くてエグ味たっぷりの死ぬほどクソ不味い珈琲でも、どうぞ?』
そんな喫茶店にあるまじき暴言、失言。
『えぇ!?』
そんなことを自信たっぷりにいわれて飲む気になんてなれるわけない。
『ひどいよ叔父さん! わたしこんなにヘコんでるのに!!』
お客さんがいるにもかかわらずつい大声で叫んでしまったわたし。
けれど叔父さんはそんなわたしの様子に動じることなく。
いつもの穏やかで、涼やかな表情のまま洗い終わったグラスを拭いていて。
そして、こういったのだ。
『おまえさんがしてるのは、これと同じことだぞ』
と。
『え?』
意味がつかめず戸惑うわたしに、諭すでもなく、叱るわけでもなく、何気ない会話をするような調子で、叔父さんは言葉を続けた。
『たとえどんなに好きなモノでも、な。こんな風にいわれちゃ誰だって敬遠したくなるだろう?』
『あ……』
『サチ坊。人はな、自分のことを嫌いなヤツのことはなかなか好きにゃなれないもんだ。自信たっぷりに、きらびやかに虚飾する必要はないが』
わたしの頭を、大きな手が撫でる。
芳ばしい珈琲の香りが染み付いた、大好きな叔父さんの手。
『せめて、他人の好意を素直に受け止められるくらいには、自分に胸張ってねぇと、な』
落ち込むことは誰にだってあるけれど、だからってそれは人のやさしさを足蹴にする理由になんてならない。
うじうじうだうだする前に、それに“むくいる”ことが大切なのだと叔父さんはいった。


