「ど、どうしてまた……」
「亮平くんが、ね。留学を決めたきっかけ、紗智ちゃんだ、っていってたでしょう?」
ま、まぁ確かに。
「そのとき、ね。思ったの。あぁ、やっぱり紗智ちゃんの行動は亮平くんの中で特別なんだなぁ、って」
「そんなこと──」
ない、といおうとしたけれど哀しげな目で制される。
八重ちゃんはゆっくりとカゴにグレープフルーツを戻し、
「紗智ちゃんはね。誰かの人生の“分岐点”に立てる人だと思うの」
「分岐点?」
「うん。人にね「ここが人生の分かれ道ですよ」って、教えられる人」
どちらが正しいとかを指し示すのではなくて、うやむやの内にそこを通り過ぎてしまうのを“立ち止まらせて”、そして“選ばせる”ことの出来る人。
そう八重ちゃんは眉をハの字にしたままいった。
「私も亮平くんも、そうやって“気付かされた側”。だから、紗智ちゃんは亮平くんにとって特別だけど、私はただの同類でしかないの……。それが悔しくて、悔しく思っちゃって。そんな自分が、そんなこと思っちゃう自分がすごく、すごく、すごく嫌で、嫌で──」
「違うよ!」
「え?」
違う、違う、違う!
八重ちゃんだって、わたしたちにとって特別な存在だ。
「八重ちゃんは“支えてくれる人”なんだよ?」
「支える人?」
そうだ。
八重ちゃんはいつだって見守ってくれていて、だからこそわたしたちはどんな1歩も思い切りよく踏み出せた。
亮平への気持ちだって、八重ちゃんが真正面から受け止めて、認めてくれたからこそ。
たとえ彼女のいうように“気付かされた側”だとしても、それは1つの側面でしかなくて、すべてじゃない。
「嫉妬したからって、全然だよ!」
そんなこと気にされちゃ、わたしなんて毎日が嫉妬の嵐だ。
「たぶんね、人の役割はそれぞれで、代わりがないからその人は特別なんだと思うの」


