まぁ八重ちゃんにかぎってそんなことはないだろうけど。
ともかく。
今回のことで八重ちゃんとの仲をおかしくする気なんてさらさらない。
あれとこれとは別問題。
そんなわけでいざ出陣。
「おはようございま~す!」
勢いよく店の扉を開けるわたし。
小気味良いブリキのベルが迎えるその先には、すでに八重ちゃんが。
何やらオーブンの前で叔父さんとあれやこれやと話をしていて、
「おぅ、サチ坊。ちょうど良かった」
目があった途端にそんなひとこと。
ん?
なんだろう?
「ちょっと頼まれてくれるか」
そういってレジ横のメモ帳に何かをさらさらと書くと、お財布と一緒にぽんっ、と渡され、
「そこにある材料を買ってきてくれるか?」
ナニナニ?
粉ゼラチンにレモングラス、生クリームにグレープフルーツねぇ。
ふんふん。
新メニューのデザートか何かかな?
でも今日は八重ちゃんと話が──
「八重ちゃんと一緒にいってきてくれるか? ついでに何か好きなもん買っていいから」
おぉ、ナイスショットです、叔父様。
正直実はどうやって話をする場面を作るか考え中だったの。
ちらっ、と八重ちゃんを見るとぱっ、と視線を逸らされたけど、
「頼んだよ、八重ちゃん」
「はい……」
教わっている立場上、叔父さんのいうことに首を横に振るわけにもいかないようで。
エプロンを外すと、わたしの横を通り過ぎて先に出ていった。
あぅ……。
思ったより、怒ってる?


