そんなこと、ない。
そういおうとしたけれど、カレの表情がそのひとことを喉の奥で押し留めさせる。
わたし自身にその自覚はなくても、カレの中で絶対的な意識として芽生えてしまっているから。
「やえっちにしたってさ、今の高校で『料理研究部』っていうやりたいこと、あるっしょ?」
「う、ん……」
「でも俺、特にしたいこと、ないんだよね」
でもだからって留学なんて飛躍し過ぎだ。
なのに亮平は、
「そんなとき、思い出したんだよね。チョイペペマン」
白い封筒を手にして、晴れやかに微笑んだ。
雨上がりの青空のようにまぶしい笑顔。
「夢とかそんなきらびやかな響きのあるもんじゃなくたっていい。でも、自分だけの特別な何かを見つけるために、道草してみようかな、って」
久しく見てなかった気がするその笑顔は、とてもあたたかいのに、
「それならさ、いっそでっかく道草してみようかな、ってさ」
ひどく胸に突き刺さった。
そう、まるで──夏の陽射しのように、強く、強く。


