「はぅえぇっ!? わたしを?」
予想だにしなかった発言につい頓狂な声が出る。
だって、わたしなんていつもふたりの背中に追いつくのがやっとで。
困ったときは本当に頼ってばかりで。
そんなわたしを、追い越したかった?
「そ、え? どこが? な、なんで?」
混乱する頭。
わけがわからずに八重ちゃんを振り返ると、
「あ……」
大きく目を開いて、
「そう、なの?」
呟きながら口許に手をあてた。
けれどそこに“不理解”の語気はなく、むしろ何か納得したような感じで。
どういうこと?
ひとり困惑し続けるわたしに亮平は、
「俺……俺なりにふたりの前を歩いてるつもりだった。でもさ、紗智、おまえがバイトするっていったとき……気付かされたんだよ……」
「なに、を?」
「とんでもなく、勘違いしてたってこと。俺なんかよりずっと紗智が前を歩いてるってことにさ」
わたし、が?
亮平の前を?
「紗智はさ、自分の“芯”をしっかりわかってて、それを大切にするためにどうするべきかをきちんとひとりで考えて、それを行動に移してる。それに比べて俺は……」
頭をがしがし、とかいた亮平は天井を仰いだ。
「自分の大切なものを“他人に依存させてる”っていうか、さ……つまり、自分ひとりじゃどこにも歩いていけない。そいつに気付かされた」
誰かを守ろうとする行為は、その“誰か”がいなければ出来ないこと。
道標になっているつもりで、自分は道標を目指して歩いていただけだ、と亮平は力なく、そして悔しそうな表情で呟いた。


