「落ち着いたか?」
氷水入りのグラスをわたしから受け取ってデスクの上に置く亮平。
室内は冷房がつけられ、ほどのよい温度になっていたけれど、
「…………」
お互い探るような沈黙が拡がっていて、重苦しい。
そんな中、最初に口を開いたのは八重ちゃんだった。
「留学……するの?」
ベッドにわたしと並んで座った彼女は、膝の上でぎゅっ、と拳を握る。
必死に“問いつめない”ように心がけているつもりだったのかもしれない。
けれど、つまり気味の声ではそれを隠しきれてはなかった。
それにつられたのかもしれない。
「どうして……どうして急に留学なんて!」
込み上げてくる感情を乗せてわたしも吐き出すようにして亮平に問いかける。
「なんで、そんな! だってアンタいったじゃない!! 今さらバラバラになるのは変だって! あれは嘘だったの!?」
そうだ。
そう亮平はいったはずだ。
それなのに。
「どうしてよぉ……」
悔しくて、視界が滲む。
せっかく、せっかく。
気持ちがぶつかり合っても、互いの想いに正直でいようと誓いを立てたのに!
当の本人がいなくなるだなんて!!
「う……うぅ……」
嗚咽が部屋に響く。
それはわたしのものであり、八重ちゃんのものでもあって。
どうしてこう、何かを決めた途端にうまくいかなくなるのだろう。
誰も傷付かないだなんて思っちゃいない。
どちらかが哀しみにうちひしがれる恋だとはわかってた。
けど、それでも──こんな結末なんて、あんまりだ。
静寂が、針のようにわたしたちのこころを幾度となく刺し貫く。
何もかもが、どうでもいい。
そう思い始め──


