何も“距離”だけというわけじゃなく。
「紗智ちゃん、バイト始めたでしょう?」
それも、焦って行動に出た理由だと八重ちゃんはいった。
「その話を聞いたときね、素直にすごいなって思ったの」
「そう、かなぁ? してる人は普通にしてると思うけど」
高校生ともなれば何かとお金が欲しいお年頃。
何もわたしだけとは限らないし、わたしからすればあらゆる家事をこなす八重ちゃんの方がよほどすごい。
けれど軽く頭を横に振った彼女は、
「バイトのね、理由。紗智ちゃん“自分の好きな物にお金をかけるのは自分のワガママ”っていってたじゃない?」
「うん。まぁ……」
確かにそう話したけれどそれが特別なこととは思えない。
だって、願望は基本自分のワガママなわけで。
それを月のお小遣いの上乗せ希望理由になんて出来ないし、却下は確実。
そう口にすると、
「そうかもしれないけれど、実際にそう思う人ってけっこう少ないと思うの」
「そう?」
「うん。それに、紗智ちゃんはその言葉を行動できちんと示したもの。学校を説得して。それってなかなか出来ることじゃないよ」
自分ではすごく当たり前のことで。
特別なことなんてひとつもないけれど。
八重ちゃんは強い眼差しで若干頬を紅潮させていた。
「だからね。あぁこんなに素敵な女の子を男の子が、亮平くんが素敵と思わないわけがない、って思ったの……」
そして、
「そう考えたらもういてもたってもいられなくって。放課後お菓子あげるから、って亮平くんを呼び出して……」
勢いあまってキスをした──と、唇を噛みしめながら力なくこぼした八重ちゃん。


