詳しい内容は書かなかったけれど、どうやら彼女はそれだけで察したらしい。
けれど、それじゃ彼女が怒らない理由にはならない。
それは“いえなかった”ことに対しての答えであって“好きになった”ことに対する答えじゃない。
「ねぇ。どうして怒らないの? わたし、亮平のこと好きになっちゃったんだよ?」
こちらの想いとは裏腹に、眉をハの字にしながらも決して穏やかな空気を崩そうとしない彼女に少し、苛立つわたし。
別にケンカしたいわけじゃなかったけれど、その態度に「その程度のものなの?」という疑念がわかずにはいられなかったからだ。
「ん~」
そんなわたしに、彼女はなぜか腕組みをしながら小首をかしげると、
「だって。それって、別に怒るようなことじゃないと思うの」
逆に不思議そうな顔をして答えた。
「え? な、んで?」
「だって。私が好きになったのに、他の人が好きにならない可能性がゼロだなんて“ありえない”でしょう?」
「え……」
「私、亮平くんがすっごく素敵な人って誰よりも知ってるもの。だから他の誰かが好きになっても全然不思議じゃないし、まして紗智ちゃんなら誰よりも彼に近いわけでしょう?」
場違いだと感じながらも、やけに自然に微笑みながら、
「前にもいったでしょ? 近過ぎて“気付いてないだけ”だ、って」
そう彼女は「ほら。怒る理由がない」と当たり前のことのようにいった。
確かに、そんなことを前にいっていたけれど。
「そういう、ものなのかな?」
「そういうものだよ~」
なんだか拍子抜けしてしまってベンチに腰を下ろすわたし。
と、
「むしろ謝らなきゃいけないのは私の方だよ……」
不意に聞こえた意外な言葉。


