「……お前、やっぱり東大めざすんだ?」



参考書のタイトルに「東大受験のための――」という前置きがついていたものだから、五味先生はそんなことを聞いてきたのだ。



「あはは。

そりゃ、あたしの成績じゃ、まだ厳しいかもしれないですけど。

目指してますよ、もちろん」



「そっか。お前、カイトがいるから目指してるだけなのかと思ってたけど、違ったんだな」



見直したよ、と五味先生が言うから、あたしは「え?」と聞き返す。


いや、だってあたし、その通り、カイト先輩がいるから目指しているだけだけど?

五味先生は、棚に目を向けたまま、こんな言葉を続けた。



「だけど、残念だったな。

お前、かなり頑張ってるのに。

カイトが留学するから、結局一緒のキャンパスライフは送れないんだもんなぁ」



え……?

今、なんて?