カヨが五味先生のことをどうして好きになったのか。

あたしの最大の謎が解けたのは、それから数日後のことだった。


その日、電車内でチカンにあったあたしが、昼休みにカヨにグチっていた時のこと。



「マンガや小説なら、チカンにあってるあたしをヒーローが助けてくれるところなのにさ。

誰にも助けてもらえなかったよ。現実は厳しいね」



お弁当を食べながらそうボヤくあたしを、カヨは「まぁまぁ」とたしなめて。


それから、「でもあたしは、助けてもらったことあるけどね」とフフっと笑った。



「チカンから? 誰に」



「五味先生に。でもチカンからじゃなくて……援助交際の魔の手から」



「五味先生に!? しかも援助交際の魔の手って!?」



思わず大きな声を出してしまったあたしに向かって

「声が大きいってば」

と、カヨが唇に指をあてる。


あたしは慌てて口を閉じ、ヒソヒソとカヨに尋ねた。



「どういうこと?」



カヨは、ちょうど食べ終わったお弁当のフタを閉じながら、


「春休みにね、こんなことがあったの――」


ゆっくりと話しはじめた。