「ん? いや、ありのままに話しただけ。

俺はセーラの部活のOBで、今は大学の理学部天文学科に通う学生。

奄美大島の皆既日食は日本の国土からは46年ぶりに見られる現象で、勉強のために見に行こうとした……って。

セーラも見に行きたいと言ったから一緒に行くことにしたけど、それはあくまでも天文部の後輩として連れて行くのであって。

他意はありませんでしたから、ご心配なくって」



天文部の後輩として連れて行く……

他意はない……



そのカイト先輩の言葉を聞いて、あたしはふいに、夢から覚めた気持ちになった。



何を勘違いしていたんだろう、あたしは。

あたしはあくまでも、後輩として一緒に連れて行ってもらえるだけで。

あたしが心のどこかで期待していたような「他意」は、先輩には存在しなかった。


どこにも、他意はなかったんだ。