「将来の夢?」
「そう、夢。
やりたいこととか、行きたいとことか、ある?」
誰にも訊けなかったこと。
誰にも言えなかったこと。
みんなが見つけているように感じて、焦って。まだ見つかってないってことを知られたくなくて、訊けも言えもしなかったこと。
叶へは素直に言葉が出たことに驚きながらも、叶だからさらけ出してもいいような気がしていた。
真剣な眼差しで見つめる美菜に、叶はちょっと考え込むように前髪を持ち上げた。
「う~ん、なんだろう?
……マイホーム?」
「ぷ。なにそれ」
眉間にしわを寄せて答えた言葉が「マイホーム」であったことに、美菜は吹き出してしまう。
「や~、なんか幸せの象徴って感じでさ。それでいて身近なものって、やっぱり家族かなって。
それに、将来の夢って言われても、いまいちピンとこないっていうか……」
頬を数回つまみながら、叶が照れくさそうに笑う。


