学校を出ると、夕暮れというにはまだ少し明るい空だった。
「日が長くなったね」
という叶の言葉に、あぁそうか、と美菜は頷く。
立春も春の彼岸もとうに過ぎていた。日が長くなったことで、春の終わりを実感する。
いつもと同じ時間に帰っていたのに、全然気が付かなかった。
先に叶が気付いた事実に、美菜は内心ひどく驚いた。
改めて空を見る。
毎日見てるからこそ、日々の違いがわからないのかもしれないけれど、それと言うにはハッとするくらい明るい夕焼け。
単に叶の感受性が強いのか、空をよく見ているのか。
おそらく、叶はこの町に関心を持っているからだ、と美菜は思った。
だから些細なことにも気付き、美菜は叶を通してそれに気付かされる。


