そんな美菜を見て、叶は安堵し微笑みながら言った。
「良かった」
え? と、聞き返す顔をした美菜へ、叶は言葉を選ぶようにし、慎重に話す。
「いや……今日、初めて笑顔を見たから……僕、昨日何かしでかしたかと思って……怒った?」
心配げに見つめる叶へ、美菜は俯いて「違うよ」と呟いた。
――ただ友達に冷やかされるのが嫌で、私が勝手に避けてただけ……
目が合ったらそらすとか、感じ悪いことを一日中していたのに、話しかけてきてくれた叶。
おとなだなぁと思う反面、自分がひどく子どもっぽく感じて、恥ずかしくなった。
日頃は、同年代の男の子なんて子どもじみてる、と思っていたのに。
「え?」
叶の声に美菜は顔を上げ、「ううん、何でもない」と言ったあと、カバンを持って言った。
「帰ろっか」


