引き金引いてサヨウナラ



授業中、今やっている範囲よりも進んだところを、叶は前の学校でやっていたようだ。


元々頭も良いのだろう。悠々とこなして見え、美菜は心の中で小さく感嘆の息をもらした。


休み時間になると叶はクラスメイトに質問攻めにされていたが、それもそつなく答えている。


美菜も他の女子に無理矢理連れられ叶の席へ行ったものの、話し掛けることもせずに、ただ皆と話す叶を見ていた。


叶と視線が合っても、なんだか昨日の叶とは別人のように感じ、つい目をそらしてしまう。


叶はそれを見て、少し寂しそうにはするものの、すぐクラスメイトの質問に答えるために笑顔を向けるのだった。


自分から目をそらしたくせに、その笑顔になんだか心がモヤモヤする。


美菜を引っ張り出した女子は、もう美菜のことなんて気にしてもいなくて、叶の話に食いついている。


いたたまれなくなって、そっとその場から離れた。