「きれいだね」
叶がぽつりと呟いた。
心からそう言っているのが伝わって、美菜は満足そうに微笑んだ。
「ここはね、晴香も知らないの。
ううん、多分町の誰も知らない。
叶と私の秘密ね」
照れくささを誤魔化したくて、イタズラっ子のような顔をする美菜。
初めて会ったときの退屈そうな顔を思い出せないくらい、美菜は表情が豊かになっていた。
そんな美菜に、叶は小さく頷いた。
「本当は夜がきれいなんだけど……あとね、秋にはこの丘一面にコスモスが咲くの」
記憶を思い出すかのように目をつむった美菜の横顔は幸せそうで、叶は目が離せないでいた。
叶の視線に気付くことはなく、美菜は目を閉じたまま大きく伸びをした。


