引き金引いてサヨウナラ



叶が美菜に追いつくと、そこからは町全体が見渡せるようになっていた。


広がる田畑の緑と、ポツポツと何軒かずつ固まりになっている家々。


都会の夜景みたいな光り輝く華々しさはないけれど、人の営みが確かに存在する、その温かく見事な風景が、眼下一面に望めるようになっていた。


「私、ここにはずっと来てなかったの。」


美菜は町を見下ろし、美しい光景へ言葉を失っている叶にポツリと呟いた。


「小さい頃はきれいだと思った風景が、いつの間にかちっぽけな町って思うようになって。

でも今日は、またきれいだって思えるかもしれないなって思ったから。

幼い頃に感じた景色を、叶にも見せたかったの」