林を抜けると、なだらかな丘が叶の目の前に広がった。
心が吸い込まれそうな空の青と、気持ちが洗い流されるような白い雲。
そして地についた足をしっかりと受け止めてくれる緑の大地。
都会のように、ビルディングで切り取られたものではなくて、視界一杯に広がる空。
浮かぶ雲がこんなにも速く流れるものだということを、緑がこんなにも鮮やかな色だったことを、叶は随分と忘れていたように感じた。
「凄い……ね」
感嘆の言葉に飾りはいらない。
ただただ自然に圧倒される。
それが心地よくて、叶は足を止めたまま、無意識にその場で微笑んでいた。
「何してるの、こっちよ」
少し先で、美菜が叶を手招きする。


