「……まだ?」
「もうちょっと。
って、何回言わせるの?」
「だって、かれこれもう20分近く歩いてない?」
あれから海岸を後にし、叶は美菜に連れられて山道を歩かされていた。
目的地までの距離がわからない叶には、余計にしんどさが蓄積されるようだ。
大した距離を歩いてないにも関わらず、ゼイゼイとわざと肩で息をする叶に、美菜は呆れた顔で笑った。
「オーバーね。せいぜいまだ10分ちょっとしか歩いてないよ。
朝からあちこち回ったから、そんな気がするだけ」
面白そうにくつくつ笑う美菜を叶は抗議するように軽く睨み、大きな溜め息をついた。
「間違いなく晴香の親友だよ」
「え?何か言った?」
「その顔は聞こえてんだろ」
わざと聞き返した美菜に、わざとらしくふてくされた顔を向けながら、叶はぼやく。
本気で気分を害したわけでないのは、叶の目が笑ってることで気付いていた。
美菜は笑いをこらえつつ、叶にちょっとだけ肩をすくめて見せた。


