「中学生の頃は、早く高校生になりたいって思ってた。
高校生になったら、何か変わるんじゃないかって。
でも、高校生になっても何も変わらない。
結局、中学生の頃と一緒。
でも、卒業したら、きっと何かが変わる。
私、この町を出て、新しい生活をするの」
自らに言い聞かせるように、ゆっくりと、だがしっかりと決意を込めて話しながら、美菜は小さく波を踏み続けた。
美菜の言葉が途切れると、叶はそっと美菜から視線を外し、波を踏んでいる美菜の足元を見た。
「同じ場所にいても、変われるんじゃないかな」
「え?」
「同じ場所で足踏みしていても、新しい波が足跡を消してまっさらにしてくれるように。
だけど足跡をつけた事実は残る。
それが成長だと、僕は思うよ」
叶はそう言うと、美菜を見つめた。
美菜と叶の視線が、出逢い、絡まる。
それを確かめて、叶は口を開いた。


