都会とは違う時間の流れに慣れていく。
そうすると、心にゆとりが出てくる。
見えなかったものも見えてくる。
例えば、今隣にいる少女とか――
せわしない時の中では漫然と流れていた興味や、煩わしく面倒だとしか思えなかった感情が、頭をもたげてくる。
叶は、隣を歩いている美菜に気付かれないように、そっと目をやった。
170センチ後半の叶からは、美菜の頭のてっぺんが見えている。
肩より少し短めな茶色の髪は艶やかで、甘くてちょっぴり苦いトリュフチョコのようだ。
初めて会った時には、つまらなそうな顔をしていて『さめた子だな』という印象だった美菜。
いとこの晴香はカラカラと良く笑う子で、強気な行動派だったから、『親友』ときいても余りピンとこなかったし、だからといって二人の関係性を想像で補おうと思えるほどの興味もなかった。


