もちろん、都会は都会で良いところがある。利便性とか。
美菜の言うように、揃わないものはないくらいに店はたくさんあるし、交通網も発達していて、どこへ移動するにも便利だ。
美菜の町には電車が一時間に一本、朝夕の通学通勤時間だけが数本増える程度だが、叶がいた町は数分に一本の電車が走る。
小さい頃は、電車が駅と駅を文字通り『繋がって』いると思っていたほどだ。
だが、たいした時間をかけることなくなんでも揃い、待ち時間なども確実に少ない筈なのに、それでも時間が足りなかった。
便利になればなるほど、あれもこれもしたくなるように、無駄な時間が短縮されればされるほど、時間が欲しかった。


