店を出た足で電車に乗り、町に帰る。
叶が「もう少しいいかな?」と前置きして、今度は町を案内して欲しい、と言った。
「う~ん、でも本当に何もないよ?」
美菜の言葉に、叶は少し首を傾けた。
「美菜は、小さい頃どこで遊んでたの?」
「山とか海とか……かな」
少し恥ずかしそうに美菜が言う。
「じゃあ、そこに案内して」
そう言った叶に、美菜は「へんな人!」と言った。
「変?」
美菜の言葉へ、叶が不思議そうに聞き返す。
「だって何もないのに……まぁいいや。行こう」
何もないところなのに、それでも行きたいという叶の気持ちはよくわからないけど、でもこのまま叶と別れるのもなんだか名残惜しい気がして、美菜は言葉を濁した。


