「僕はいいところだと思うけどなぁ」 再びそう言った叶に、美菜はやっと視線を戻した。 「都会から来た人は『空気がおいしい』とか『水がきれい』とか言うけど、私はこんな田舎はイヤ。 ……東京から来た叶にはわかんないよ」 最後の台詞は言い過ぎたか、という顔をした美菜だが、叶は気にもとめなかったようにさらりと流した。 「僕は東京よりも時間の流れがゆっくりでいいけどね。 東京はせわしなくて、住むには合わないかな」 叶は目を細め、徐々にスピードを落とし始めた電車に「そろそろ駅かな?」と言った。