大袈裟にホッとした顔をしてみせた叶に、美菜は「さっきのお返し」と笑った。


遊園地で高い所が苦手な叶を心配したのに、演技をされた腹いせだ。


ガタンと電車が止まり、寝ぼけ眼の弘と晴香を引っ張りつつ、ホームへ降りる。


待ち合わせ場所に使った銅像前で、美菜は一人別れた。


「またね」


そう言って手を振り、美菜は三人に背を向けた。


叶とは、明日も同じ時間にここで待ち合わせることになっていた。


新しい友人、叶と過ごした今日はとても楽しく、美菜の鬱々とした感情を、一時忘れさせてくれた。


明日という日が楽しみなのは、いつ以来だろう――


美菜ははにかむように口元を緩ませ、家へと歩いた。