叶は小さく咳払いをし、二人を起こさぬ気配りか、囁くように呟いた。
「美菜は、明日何か用事ある?」
美菜が首を振って叶を見ると、叶は頬をポリポリと掻きながら言った。
「もし良かったら明日、町を案内してくれないかな……?」
照れくさそうにしている叶に感化されたのか、美菜の心臓がトクトクと早くなっていく。
今日初めて会った男の子と、二人で出掛けるなんて。
戸惑いがないといえば嘘になる。
案内だってうまく出来るか……だけど。
固まった美菜へ、叶は言い訳をするように、一気に言葉を押し出した。
「本当は晴香に頼もうと思ってたんだけど、彼氏に悪いし……でも美菜に頼むのも迷惑だよね。
やっぱり一人で適当に回るから」


