観覧車はあまり並んでいなかったけれど、それでも最後にこれへと思ったのは晴香だけではないらしく、列が出来ていた。
すぐに順番は回ってきそうだ。
「叶、大丈夫なの?」
この1日ですっかり打ち解けた叶。
彼にだけ聞こえる大きさで、美菜はそう囁いた。
高いところが苦手なら、無理に乗る必要はない。
なんなら自分も残ったっていいし──恋人同士の弘と晴香の間にひとり混ざるような不粋はしたくない。
そう思っての言葉だったが、叶は小さく首を振った。
「まぁ……頑張るよ」
少し情けない声で言う叶を真に受け、美菜はあたふたする。
含み笑いをする叶に、美菜はわざと演技されたことを知り、「余裕ね」と呆れて笑った。
観覧車に乗る順番が来た。
晴香と弘、美菜と叶で乗り込むことになり、美菜は少し戸惑ったものの、多少予想はしていたことだから、
「二人で乗りたい」
という晴香の要望に反対する気も起きず、叶と二人で乗り込んだ。


